更新日 27/Nov/2019

これまでの一行詩の蓄積を掲載しています

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お前なんて嫌いだって ぶつくさ 呟く齢になりぬ

閉扉街(シャッター街)を行く 何処からか香るイーストの発酵 手風琴(アコーディオン)を 練習する音が洩れる もうすぐ夜明けだ

うるせえな 蠅みてえに纏わり付く思い出ってやろう ちょいと戻ってチャラにするか

魂ってやつぁ 水が変わりゃ 泳ぎ方も変わらあな

真紅の仏桑花(ハイビスカス) 我が意を得たりと 坪庭制す

青空に大きくて透明な橋が架かっていたとしたら あなたは何を思う

旅をしよう 海面の青く輝く洞窟へ 天空に浮かぶ城へ そして風の吹き止まぬ草原の交差点へ そうそう貴方の心の襞の奥底へもお忘れなく

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約されし地に住まう黒き羽持つ心よ お前は何処の森を刈るのだ この無明の大地で

宙(そら)の大河にはなぜか一筋気の通る穴があり そこでは行き来する思いが躓くらしい あなたの魂(こん)が迷いませんように

とびきりの悲しみ持ちて微笑め 届くとも届かぬとも まだ来ぬ闇の底なれば

山の上に大きな岩が乗っている 岩には深い穴が穿ってある 私は毎日山に登り夕暮れまで穴を覗いて暮らした そして いま私は穴になった

唐松林抜け来る遠雷に抱擁を解く 緩慢なる息 薄き瞳孔の際に いましばしただ漠念とす

入道雲の芯へと沈みつつ お前もまた己が罪に震え上がるのか そうか だが 私は待っているよ

幻視 アララットの山頂に揺れる水塊ありて 箱船飲み込むは二の月の軌跡なり

連作 最北の地1:祖父の話 ナホトカに密航帰りの船底で抱き合う友はついに凍れり 乏しき北の地故に

連作 最北の地2:祖母の話 開墾の村に収穫なく 移りし海境の番屋 何時も赤い腰巻きなんだよ ソ連来るから

連作 最北の地3:父の話 血の一滴と言われ 零式は床の合わせすら外れつ 大地のするする流れ見え 大きなバッテン目指すのさ

連作 最北の地4:母の話 原野番外の湿地に遊びし瞳の大きい娘 樺太で口墨を入れたという

連作 最北の地5:私の話 基地の女はクリームのレコード借してくれ あたしアメちゃん追っかけててさ でも寒いねここ 夏なのに沖縄の冬みたい

連作 旧矢作川口にて1:河口に海鵜が集まっている 蜆をとる夫婦がいる 私は餌のない糸を垂れている 猫が数匹堤防でじゃれている 遠くで子どもが叫んでいる 月見草が揺れている 蟻が物陰から覗いている 雲はひとかたまりもなく 自転車が国道を走っていく

連作2 旧矢作川口にて:梢で鵯が何かをついばんでいる 向こうの畑で老婆が草取りをしている 私は掘り起こした馬鈴薯をより分けている 犬が峠道をゆっくりやってくる 麦の穂が揺れている 栗鼠が葉陰から覗いている 陽の光はここまで届き 郵便のオートバイが土手を走っていく

連作3 旧矢作川口にて:電線に烏が並んでいる 窓ふきのゴンドラが少し揺れている 私はベンチに腰掛け携帯ゲームをしている OLがコンビニに入ったり出たりしている 花水木が陽を浴びて揺れている 老人が窓を少し開け外を見ている 風はぬうように流れてきて 配送車が何処かへ消えていく

ある晴れ渡った日に娘はやってきた そして ただ お父さん とだけ言った

私は向日葵のようにキミを見ていた キミは私の周りを一回りし そして 出て行った 私の首は今も赤い紐が絡まっている

風がためらっている 原野を過ぎればいいのか 川面を靡けばいいのか そして私は爪先を揃えた

たとえば源流の一雫にか 月の小さな小さなクレーターにか 閉じ込められたとして 心は寒さを感じるのだろうか

天蓋鏡を境に等しく世界があるとして どちらを歩むのだろうか ならざるものは

雨足は屋根を敲き風は斜めに落ちるが部屋はいたって閑か でも心の中が嵐だったりする

幼き欲望 小(リトル)ステップで膨らみおり

豊かなる敗残の証し影座る 淡き逆光のベンチ

鰯雲流れ落ちる際 虚宙(こくう)の始まりありて 我立ちすくむ

寝息にか夢の結にか醒まされて つと指先を空に這わす 扉はどこ

金色のフンデルトワッサーが塔 頬を切る湾岸高速の快 それワーゲンよ六甲に突っ込め!

温き缶飲料をポケットに君は帰って行った さて吾は凍みしこの家で無為なるぞ

己が叫声ただ侘びし この郷(くに)に謝るという語類なし

移ろう視線に懇意ある だが 我まだ果て行かん 凛と波紋の一撃かな

嘔吐するほど飲む 路端に寝込むほど騒ぐは 昨今老人のすることなり

何を求めたのか 移りし異郷の侘び庵 すべては渦なるぞ

淋しかるや求道の 何時になく味なし 一汁一菜

戯けたことをと軋む四肢 夏のシャワーに玉の汗

蒼球の 際より漏れし 神が息

ピンホール 記憶の抜けて見え

幻影は 路地を迂った すぐそこだよ

月失いて 燻る風間 轍啼く

切り外す羅針の先 過剰なる圧縮あり

窓から這い出す人型の影 のぞみと言う名を持つという

薄切りの記憶 今 大空にクリップす

トラムペット 吸い込まれる月と君

夏の公園 沈む花弁 流離う葉脈 母娘は何処 父も何処

岩陰に流れ落ちたる月 覗く夜空の仄明るく ペタル絡む

神なる人も 波の上を歩いて 躓いたことがあるとか

世界の在るは 頁を捲ってか 閉じてか

深き闇 浅き光 離れし唇に時揺らぐ

沈み返す川面に散り散りの陽 鮎になる

積乱雲 もう一つ空を乗せ 蝉鳴き止まず

香明の僅か残りし陵を抜け ただただ耳顫える

いつまでも離れぬ影 嫌なら暗闇に立て と言う

エクトプラズマ流舞する 気に映す想いとは

錆び 取り残された部屋の 陰陽礼賛もまた

薪ストーブ 炎さえ身を捩らせ 愛終る

闇遠く さらに闇遠く きみ凍る

世界在るは 頁を捲ってか 閉じてか

嵐屋根を敲き 金縛りの我を抜け 内実揮発す

雨足は屋根を敲き風は斜めに落ちるが部屋はいたって閑か で も 心の中が嵐だったりする

おいお前 そう お前だ

天と地の間に一本の見えないロープを張り ココロとカラダの間を行き交ってはどうか

たとえば源流の一雫にか 月の小さな小さなクレーターにか 閉じ込められたとして 心は寒さを感じるのだろうか

豊かなる敗残の証し影座る 淡き逆光のベンチ

寝息にか夢の結にか醒まされて つと指先を空に這わす 扉はどこ

鰯雲流れ落ちる際 虚宙の始まりありて 我立ちすくむ

降り止みて 雲の合間に 深きオリオン見ゆ

放尿の快 肩首制す オリオン座

土返さば 御前達もまた生く 蛙蚯蚓黄金子

あの山並みの果て 友既になく 谺消ゆ

気高さは猫の良性 北の黒い森の長き鎧毛の狩人なるを想像す

導かれたいのは 月 星 奈落

山の夜は騒がしい 風虫鵺 里の夜も騒がしい 風鼠酒人

星に導かれたいのか 月に導かれたいのか せつなせつなの小川 辺り佇む

薄衣 はらりとするか 風の息

白砂に 浸みては戻らぬ 蝉の声

たとえばこれが白球だとして 思い出すのは空か土か汗か たとえばこれが運動靴だとして 足指のつまった感覚か大地を蹴り離れた高さか

天使の羽を持てば雲の上と下から観えるのにという歌があった気がする

月のやけに明るくて 流れる雲と 夜影法師

己が叫声ただ侘びし この田舎に謝るという語類なし

薄桃に染まりし紙片隠れ置き 狂奔の果てのベッドサイド

移ろう視線に懇意のある だが 我まだ果て行かん

だめづくしの常なるに 凛と波紋の一撃かな

何求め 移りし異郷の侘び すべては渦なるぞ

流行を脱がされて 寒々と立っている 烏頭の男

とびきりの悲しみ持ちて微笑め 移ろう視線の先 まだ来ぬ闇の底なれば

沈み行く清澄なる中心点よ お前もまた己が罪に震え上がるのか

眠れる森の奥深くに一際高き段あり さて登ったものか 引き返したものか

薄たなびく程よき原の崩れし庵見え 山姥が集めし星くずをカリコリ食す蟇(ひき)はおり

輪舞する精霊 微笑みの風渡る始まりの日 最後の仙女には気をつけろ

たとえば源流の一雫にか 月の小さな小さなクレーターにか 閉じ込められたとして 心は寒さを感じるのだろうか

爆ぜる炎 落ちる灰 入るは虫にあらず 我が魂なり

花茎揺れ羽虫揺れ 流れるごとく 視線もまた

寒波縦断北上す 宴が残器舞い氷る

老い行く汀 萎えし体躯を棚上げせよ 抜ける風の新しき眼となりて

ひとところで濃淡の澱のごとく絡み合い お前は薄唇を開け月に背を向けた 俺は踏み出す足先を躓く

星空返す梢下の浅き流れ 際よりギシギシ凍れり

拡張した瞳孔に覚り 言いつまる

気泡の馴染み行く先 我も溶ける

豊かなる敗れし存在の影座る 淡き逆光のベンチ

蝉の小便 鳩の糞 お前の愛想つかし 惨めだ

何時になく心弾む夏 おい蟻よ その干涸らびた蚯蚓(みみず)をくれ

不分明なる成し事の 実りもまた揺蕩うか

かなり来た 結構頑張った だがまだまだ着かない

待つことの嬉しさはある たとえ羽化するのが蛾であっとしても

乳首噛む顎の力を緩めない おお もとより愛は無し

月失いて燻る風間に 轍啼く

仄明るきあたり 残る失月も 一息でとや

嵐いま屋根を敲き 金縛りが我を抜け 内実揮発す

胞子どもは管孔より浮遊し 魂胆は陰唇より陵す

路傍に頑なな石がいる 進む気も戻る気もないらしい 私は軽く会釈して通り過ぎる 行き先は薄暮の後ろだ

色褪せし眼に画鋲の刺ささりし藁人形 朽ちている そこいらにばらばら落ちている 口惜しさ